物語
一
手のひらの中の、千二百年
平安の頃から千二百年。涼をとるだけでなく、祝いの席に、舞に、贈り物に。日本人の手のひらに、いつも扇子がありました。
二
江戸扇子という技
京扇子より骨の数が少なく、一本の骨が太い。素朴で、力強い。そして閉じたとき、「パチン」と澄んだ音が鳴る。それが江戸扇子です。
三
江戸川区で、この技を継ぐただひとり
江戸扇子工房「まつ井」の松井宏さん。江戸川区指定無形文化財保持者。江戸扇子の職人は都内でもわずかとなり、江戸川区では松井さんただひとりになりました。
四
職人が、職人を助けた
革で扇子を作る——声をかけられた東京下町の革職人たちも、はじめは首を横に振った。それでも「江戸川区で、この技を継ぐ人はひとりしかいない」と知ったとき、空気が変わりました。約一年の試行錯誤の末に生まれたのが、約0.3ミリ、紙のように薄い革をまとった扇子です。
手を挙げたのは、隅田川と江戸川にはさまれた革の街で、百年つづく葛飾レザーの職人たちでした。





